コラム

美容師と理容師って何が違うの?知っておきたい基本知識
2024.08.22

美容師と理容師って何が違うの?知っておきたい基本知識

髪を切るという行為は一見シンプルに見えますが、美容師と理容師ではその業務内容に大きな違いがあります。では、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。本記事では、両者の業務内容の違いや、ダブルライセンスを取得するメリット・デメリットなどをご紹介します。美容師を目指す皆さまは、ぜひ参考にしてみてください。

 

美容師と理容師、そもそも何が違うの?

美容師と理容師は、どちらもヘアスタイリングに関わる専門職ですが、仕事内容や働く場所に関して法律で定められた違いがあります。

 

法律で定められた仕事内容の違い

美容師と理容師の仕事内容は、それぞれ「美容師法」と「理容師法」によって定められています。

 

美容師の仕事内容

・パーマネントウェーブ

・結髪

・化粧

・髪の毛の刈り込み、顔そり以外の方法による顔面の毛の手入れ

 

理容師の仕事内容

・頭髪の刈り込み、顔そり

・顔面の処置

・頭髪の染色、パーマネントウェーブ、結髪

 

主な違いは、美容師は化粧や髪の毛の手入れに特化しているのに対し、理容師は顔そりや頭髪の刈り込みを中心としている点です。

顔そりやひげ剃りは、理容師であれば行えますが、美容師は行うことができません。一方で、美容師は着付けなども業務範囲とされています。

 

美容師と理容師、働く場所の違い

美容師と理容師の働く場所も、法律によって区別されています。

 

美容師:美容所(美容室、ヘアサロンなど)

理容師:理容所(理容室、床屋など)

 

美容所と理容所は、それぞれ別の営業許可が必要であり、同じ店舗で両方の営業を行うことはできません(従業員全員が理容師・美容師両方の資格を持っている場合を除く)。ただし、同じ建物内で区画を分けるのであれば、営業可能です。

 

美容師と理容師、できることは?

美容師と理容師では、提供できるサービスに違いがあります。ここでは主要な施術について、それぞれができることとできないことを解説します。

 

カット

美容師と理容師の両方が行えますが、アプローチ方法が異なります。美容師はファッション性を重視したカットを得意とし、理容師は清潔感と機能性を重視したカットを得意としていることが多いです。

 

パーマ

両者ともパーマネントウェーブを施術できますが、美容師の方がより多様なパーマスタイルを提供している傾向があります。

 

カラー

美容師、理容師ともに髪を染めることができます。ただし、美容師の方がより幅広いカラーリング技術を持っていることが多いです。

 

顔そり

理容師のみが行える施術です。美容師は顔そりを行うことができません。

 

化粧

美容師のみが行える施術です。理容師は化粧を施すことができません。

 

美容師と理容師の得意な施術

美容師は、トレンドを取り入れたヘアスタイリングや多様なカラーリング、複雑なパーマスタイル、ヘアアレンジ、メイクアップ、ヘッドスパやヘアトリートメントなどを得意としています。これらの施術は、ファッションや美容トレンドと密接に関連しており、顧客の個性やライフスタイルに合わせた提案ができるのが美容師の強みです。

 

一方、理容師は短髪のカットや顔そり、清潔感のあるビジネススタイル、頭皮ケア、マッサージなどを得意としています。特に、顔そりや短髪のカットは理容師ならではの技術であり、男性客を中心に支持されています。また、頭皮ケアやマッサージなど、リラクゼーション要素を含むサービスも理容師の特徴的な施術といえるでしょう

 

美容師と理容師の資格を取得するには?

美容師や理容師になるためには、それぞれ国家資格を取得する必要があります。

ここでは、資格取得のプロセスや必要な時間、費用について詳しくご紹介します。

 

美容師・理容師の国家試験について

美容師と理容師の国家試験は、それぞれ年に2回実施されます。試験は実技試験と筆記試験の2つから構成されています。

 

実技試験

美容師:カット、オールウェーブセッティング、ワインディング(髪にロッドなどを巻きつけること)

理容師:カット、シェービング、顔面処置、整髪

 

筆記試験

両者とも、関連法規・衛生管理・保健・香粧品化学・文化論などの科目があります。

合格基準は、筆記試験が54問(問題33を除く)中32問以上の正答数であることです。

 

参照:公益財団法人理容師美容師試験研修センター「第49回 理容師国家試験及び美容師国家試験の合格基準」https://www.rbc.or.jp/exam/criteria/

 

美容学校に通うべき?独学は可能?

美容師・理容師の国家試験を受験するためには、原則として指定された美容学校や理容学校を卒業する必要があります。これらの学校では、理論と実践の両面から専門的な教育を受けられます。独学での資格取得も不可能ではありませんが、非常に困難といえるでしょう。特に、カットやオールウェーブセッティングなどの練習のためには、マネキンを購入するか練習台になる人を探さなくてはいけません。

 

資格取得にかかる費用と時間

・費用

美容学校や理容学校の学費は、学校によって異なりますが、おおよそ200~300万円程度です。これには、授業料や実習費、教材費などが含まれます。また、別途で教育充実費や郊外授業費などが含まれる場合もあります。

 

・時間

美容師・理容師の資格を取得するには、通常2年間の学校教育が必要です。ただし、高校在学中に通信教育で学ぶことで、卒業後すぐに受験資格を得られるコースもあります。

卒業後、国家試験の合格を経て晴れて美容師・理容師として働き始めることができます。しかし実際の現場では、さらに数年間の実務経験を積んでスキルを磨いていく必要があります。

 

美容師と理容師、ダブルライセンスを取得するメリット・デメリット

ダブルライセンスとは、美容師と理容師の両方の国家資格を取得することを指します。これにより、美容所と理容所の両方で働けるようになります。つまり、法律で区分されている2つの領域を横断して活動可能で、より幅広い可能性を持つ専門家となれるのです。

 

ダブルライセンスを取得するメリット

ダブルライセンスを取得することで、幅広いサービスの提供が可能になります。美容師と理容師の両方の技術を身に付けることで、より多様なサービスを提供できるようになるのです。例えば、ヘアカットだけでなく、顔そりやマニキュアなどの施術も行えるようになり、顧客のニーズにより柔軟に対応ができます。

 

さらに、就職の選択肢も広がるでしょう。美容室と理容室の両方で働けるため、就職の機会が増えます。また、美容と理容の両方のスキルを持っていることで、他の候補者との差別化を図ることができ、より魅力的な人材として評価される可能性が高まります。

 

ダブルライセンスは、将来独立する際の強みにもなるでしょう。美容所と理容所の両方を開業する選択肢が生まれるため、より幅広い顧客層にアプローチできる可能性があります。また、一つの店舗で多様なサービスを提供することで、顧客の利便性を高めて競争力のある事業を展開できるかもしれません。

 

さらに、美容と理容の技術を組み合わせることで、独自のスタイルやサービスを生み出せます。これは、クリエイティブな面でも大きな可能性を秘めています。例えば、理容技術を生かした精密なカットと、美容技術を生かしたトレンディなスタイリングを組み合わせるなど、新しい価値を創造することができるでしょう。

 

ダブルライセンスを取得するデメリット

一方で、ダブルライセンスの取得には課題もあります。まず、時間と費用の増加が挙げられます。2つの資格を取得するには、それぞれの学校に通う必要があるため、時間と費用が倍近くかかってしまうのです。これは、経済的な負担だけでなく、キャリアスタートの遅れにつながる可能性もあるでしょう。

 

美容と理容の両方の技術と知識を習得する必要があるため、学習量が膨大になって学習負担も増加します。これは、単に時間の問題だけでなく、精神的な負担にもなるといえます。

 

また、キャリアの方向性が不明確になることも考えられます。両方の資格を持つことで、かえって専門性が薄まり、自身のキャリアの方向性を決めるのが難しくなる場合があります。美容と理容、どちらに軸足を置くべきか悩んでしまうかもしれません。

 

ダブルライセンスの取得を検討する際は、自身のキャリアゴールや将来のビジョンと照らし合わせ、メリットとデメリットを慎重に検討することが重要です。単に可能性を広げるだけでなく、その後のキャリアパスを具体的にイメージしながら判断しましょう。

 

美容師と理容師、将来性はあるの?

美容師と理容師の将来性について考える上で、業界の現状や収入、キャリアパスについても重要です。ここでは、それぞれについて解説していきます。

 

美容業界の現状と将来性

近年、美容業界は大きな変化を遂げています。厚生労働省発表の「令和3年度衛生行政報告例の概況」によると、2022年度末の理容・美容所の施設数は全国で264,223件です。2021年3月末は257,890件だったため、1年間に6,333件増えたことになります。

 

出典:厚生労働省「令和3年度衛生行政報告例の概況」https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/21/

 

「令和2年度衛生行政報告例の概況」https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/20/

 

一方で、特に若い世代を中心に、従来の「床屋」のイメージから脱却したファッション性の高いメンズサロンへの需要が高まっています。また、顧客のニーズも多様化しているのが特徴です。エシカルやサスティナブルな製品への需要や、男性向けの美容サービスの拡大など、従来の美容・理容の枠を超えた新しいサービスへの期待が高まっているとされています。将来性については、個人の外見に対する関心は今後も高まると予想されているため、基本的な需要は維持されると考えられるでしょう。

 

美容師・理容師の収入について

美容師と理容師の収入は、経験年数、勤務地域、勤務先の規模などによって大きく異なります。厚生労働省のデータによると、美容師の年収(全国平均)は、約330.1万円です。

求人賃金(月額)は、約25.1万円となります。

 

出典:厚生労働省 職業情報提供サイト jobtag「美容師」https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/116

 

さらに、キャリアなどによっても収入が変化するでしょう。

新人美容師・理容師(1~3年目)の平均年収は200~300万円程度です。この時期は技術を磨きながら、顧客との信頼関係を構築する重要な時期です。多くの場合、基本給にわずかな歩合給が加わる形態となっています。

 

中堅美容師・理容師(4~10年目)になると、平均年収は300~500万円程度に上昇します。この段階では、独自の固定顧客を持ち始め、技術も向上することで歩合給の割合が増えていきます。

 

ベテラン美容師・理容師(10年以上)の平均年収は500~800万円程度です。安定した顧客基盤と高度な技術を持つこの段階では、歩合給が収入の大きな部分を占めるようになります。

 

さらに、トップスタイリストや有名サロンのオーナーなどは、1,000万円を超える年収を得ている場合もあります。ただし、これらはあくまで平均的な数字であり、個人の技術力や顧客獲得能力、勤務先の条件などによって大きく変動します。

 

美容師・理容師のキャリアパス

美容師・理容師のキャリアパスは多様で、個人の志向や能力に応じてさまざまな選択肢があります。

 

最も一般的なキャリアパスは、サロンスタッフとしてのキャリアアップです。アシスタントからスタートし、スタイリスト、トップスタイリスト、そして店長へと昇進していきます。このキャリアアップの過程で、技術のみならず接客スキルやマネジメント能力も磨いていきます。

経験を積んだ後、独立開業する道もあるでしょう。自身のサロンを開業することで、自分の理想とする美容・理容サービスを提供できます。ただし、経営者としての知識やスキルも必要となるため、事前の準備が重要です。

 

さらに、ヘアメイクアーティストとして活躍する道もあります。芸能人やモデルのヘアメイクを担当することで、よりクリエイティブな仕事に挑戦することができるでしょう。ファッションショーやテレビ、映画など、さまざまな分野において活躍の場があります。

 

美容師と理容師の違いを知ろう

美容師・理容師という職業は、技術や創造性を生かしながら、人々の生活に直接的に関わることができる魅力的な仕事です。美容師・理容師は、仕事内容や働く場所に法律で定められた違いがあることから始まり、提供できるサービスの範囲も異なります。美容師は主にファッション性や化粧に重点を置き、理容師は顔そりや短髪のカットを得意としています。社会の変化やテクノロジーの進歩に伴い、今後も新たな可能性が生まれていくことでしょう。自身の興味や強みを生かしながら、柔軟にキャリアを構築していくことが、この業界で成功する鍵となります。

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